特定の宗教を持っているわけではありません。
それでも年を重ねるほどとくに仏教の教えに心が動くことがあります。大人になってからも心から助言してくれる大人が必要なときがあります。けれどいつの間にか私自身がもう誰かに助言をする側の年齢になっていました。
忙しく過ごしていてふと息をつく時間ができると休むより先に私はちゃんとした道を歩いているのだろうかと自分に問いかけることがあります。
そんなとき本を開いたり本の中の言葉を書き写したりします。答えをくれる言葉を探す気持ちで。
ペンが紙に触れる感覚と一文字ずつ形をなぞっていく時間は不思議なほど頭の中を空っぽにしてくれます。意味を理解しようとするより先にただ書くこと。それだけで何かが整っていくような気持ちになります。
韓国から連れてきたこのノートはそんな時間によく似合うノートです。
仏典の短く深い言葉を一ページずつ書き写しながら散らばった心をもう一度指先へ連れてきます。信仰のための時間ではなく自分自身に戻るための時間として。
宗教の知識も特別な道具も必要ありません。ペンと自分に許されたひとときがあれば。
大きな悟りはなくてもいい。書き終えたあと心がはじめより整っていたならそれで十分だと思います。